たまりば

  地域と私・始めの一歩塾 地域と私・始めの一歩塾  三鷹市 三鷹市

2016年05月26日

計算の工夫。


中学3年生の数学は、「因数分解」の学習が終わるとその利用の学習が始まります。
因数分解を利用して筆算しないで計算問題を解く問題などがあります。
例えば、こんな問題です。
98×102 を工夫して計算しなさい。

この程度なら、筆算したって大した手間ではないのですが、因数分解を利用して、
98×102
=(100−2)(100+2)
=10000−4
=9996
というふうに計算できます。
ただ、これを便利と感じるか、かえって面倒くさいと感じるかは微妙なところです。
こういう問題は、因数分解を利用するために人工的に作られた問題という印象が強いですね。
普段の計算の際には、気がついたのならやったら良いけれど、別に普通に筆算しても良さそうです。

しかし、計算ミスをしないために必要な計算の工夫というものもあります。
そして、計算ミスをしやすい子は、計算ミスをしやすい過程を踏む傾向があります。
なぜ、よりによってその過程を選ぶのか?
それでも解けるけれど面倒くさくないか?
見ていると不思議なほどに面倒くさいほうを選んでしまうのです。
例えば、こんなふうに。

 4×4×5
=16×5

いえ、それでも、答えは出ます。
でも、16×5の暗算ができないので、渋い顔をしてわざわざ筆算しています。
計算の苦手な子の中には、そこで筆算ミスをしてしまう子もいます。
そうした子に、
「後ろの4×5を先に計算して、4×20として解くと楽だよ」
と説明すると、
「そういうやり方があるんだ!」
と驚愕しています。
計算は頭から順番にやるものと決めつけているので、交換法則を利用できることに気づかないのでしょう。

こういうちょっとした計算センスが出やすいのが、連立方程式。
特に、3元1次方程式です。
例えば、こんな問題です。

4a+2b+c=0  ・・・・①
25a+5b+c=0 ・・・・②
a+b+c=−2    ・・・・③

文字が3種類ありますので、式全体を足したり引いたりして1つの文字を消去し、文字が2種類だけの2本の式を新たに作りだして解きます。
どうやって作るか。
cの係数はどれも1です。
これが一番消しやすい。
係数が違うと式全体を何倍かしなければならなくなり、それだけ面倒くさくなります。
だから、cを消します。

②−①で
21a+3b=0 ・・・④
①−③で
3a+b=2   ・・・⑤
④−⑤×3で
12a=−6
  a=−0.5

本当は分数で表記したいのですが、分数表記の1/2はどうも見にくいので、今回は小数で表記してみました。
それはともかく、こんなふうに解いていけば、あとは芋づる式にbの値もcの値も出てきます。

ところが、計算が苦手な子ほどなぜか別の方法で解く傾向があります。
aを消そうとするんです。
aを消すとなったら、例えば③×25とか③×4をしなければなりません。
そして、途中で計算ミスをおかします。
右辺の定数項を何倍かするのを忘れるミスは特に多いです。

1人2人の話ではありません。
私が出会った計算が苦手な子は、たいていそうでした。
なぜ、cを消そうと思わないのか?
最初の文字がaだから何も考えずにaを消すのでしょうか。
結局、何の工夫もしないで算数・数学の問題に対してきた結果が計算力の差につながります。
ちょっとの工夫で劇的に計算は楽になるので、この発想ができると良いのになあ。
私は、そう思っていました。

ですが、ここ1年ほど、
「あれ?これは?」
と感じる生徒の入会が続き、別の側面も考えるようになりました。
どう表現したら適切なのかよくわからないのですが、「変な工夫をする」子たちの存在を感じるようになったのです。

例えば、わり算の筆算。
78÷13 の筆算をするとき、普通は割られる数の78をまず書き、それに「屋根」をつけ、それから割る数の13をその左に書きます。
ところが、これを13から書く子たちがいるのです。
そして、それをする子たちは、割る数と割られる数の混同を起こしやすく、78÷13の計算をしなければならないのに、13÷78の計算をしてしまうミスが多いのです。
それはそうですよね。
式の見た目と異なることを自分の判断でやっているのですから。
そのうち混同します。
そして一度混同すると、どちらが正しいかわからなくなり、一生混乱し続ける可能性があります。
そのミスを発見する度に注意しているのですが、なかなか治りません。
もう治らないのかもしれないと感じるほどです。

そもそも何でその子は割る数から書くようになったのでしょうか。
横書きのノートは左から文字を埋めていくもの。
そこからの発想だったのでしょうか?
つまり、本人としてはそれはノートをきれいに埋めていくための「工夫」だったのでしょうか。
その工夫を始めたとき、それが後に自分をどれほど苦しめることになるか、本人にはわからなかったのです。

そうした子たちのわり算の筆算を行う過程も、常識とは順番が異なることがあります。
まっとうな手順を踏みません。
1桁ずつ商を立てて、かけて、ひいて、上から次の桁の数を下ろしてきて、という作業手順を踏まず、見ていてヒヤヒヤするような危うい作業手順でわり算を進めます。
割れないとわかると、上からまとめて2桁おろしてきたり。
横線をひくのが面倒なのか、後でまとめてひいたり。
単に手順が理解できていないと見ることもできます。
ただ、もしかしたら「同じ作業はまとめてやったほうが合理的」と考えているのではないかと筆算の様子を見ていて感じることがあるのです。
筆算で同じ作業をまとめてやるのは、合理的どころか自らミスを誘い込むことです。
くだらない工夫を筆算に持ち込むから桁に対する認識が薄れ、商に0を立てることができず、どの桁に商を立てるかさえわからなくなり、答えは大抵桁がズレています。


その子たちにもう1つ共通するのは、分数を分子から書いてしまうこと。
これも注意しても治らず、翌週の授業ではまた同じことをやってしまいます。
一度癖がつくとなかなか治らないのです。
ノートは上から書くものだというルールからそうしているのでしょうか。
わり算の筆算のときと同じルール、ある意味合理的な「工夫」が働いているのでしょうか?
どうも、ノートの見た目にある種のこだわりがあるように感じます。
低学年まで使っていたマス目のノートに1文字ずつ数字を埋めていくことへのこだわりが高学年になっても残っているのかもしれません。
上から、あるいは左からきちっと埋めていかないと、変な余白が生まれてしまう・・・・。
それは避けなればならないというこだわりでしょうか。

こちらは実害は少ないのですが、口頭で、
「これは4分の1でしょう?」
などと説明すると、彼らは4/1とノートに書いてしまうことがあり、その点に注意を払う必要があります。

自分の中での工夫にこだわり、自らに変な癖をつけてしまい、しかもそれを直せないのだとしたら、それはやはり学力が低いということかなあ・・・・・。


一般的に、算数の苦手な子には、例えば「円とおうぎ形の面積」の単元で計算の工夫を教えるのは難しい場合が多いです。

8×8×3.14÷4-4×4×3.14÷2
=(8×8÷4-4×4÷2)×3.14
=(16-8)×3.14
=8×3.14

こうした工夫をして計算すれば、×3.14の計算は1回で済む
そのように教えても、算数が苦手な子たちは、うまく呑み込めないようで実行できません。
一番最初に書いた、4×4×5=16×5と解く子たちは、こうした工夫が苦手です。
ひどく混乱し、やがて意地を張った顔になり、
「私は普通に解きたいの!」
と怒り出すこともあります。
ですから、私は、わり算の筆算や分数が逆になってしまう子たちにも、計算の工夫は教えませんでした。

その日も、その子は、計算しながらため息をつき、時計ばかりチラチラ見ていました。
計算で正答できることが少ないせいか、彼らはそもそも計算が嫌いです。
子どものそんな態度には慣れている私はそうしたサインは一切無視して彼の手元を見ていました。
すると、彼は、うんざりしたように、
8×8×3.14÷4-4×4×3.14÷2
=3.14×(16-8)
と書いたのです。
「・・・・・・え?今、何をしたの?」
それに対してものも言わず消しゴムで消そうとする彼を止め、
「いや、消さないで。合ってるから。正しいから」
しかし、慌てて消したので、本当に消したかったところではなく、別の問題の式を消してしまっている・・・・。

それはともかく、その次の問題でも彼は交換法則・分配法則を利用した計算の工夫が出来ました。
×3.14の計算は間違えてしまうので、正解は出せないのですが・・・・。

このバランスの悪さは何だろう?
ともあれ、この子は、工夫ができる。
算数の苦手な子はこの工夫ができない、という今までの私の中の判断を覆す事態でした。

私の知る算数・数学が苦手な子というのは、単純に言えば数学センスのない子たちでした。
一方で、数学の問題の解き方を作業手順として覚え込み、言われたことを言われた通りに再現することはできる可能性がありました。

数学に対してそういう学習態度のため、高校生になれば数学は消化試合、ただ単位を取るだけの科目となってしまうのですが・・・・・。

今、偶然にもうちの塾に複数いるこの子たちは、数学センスがないというのとは違う。
普通に数学が苦手な子よりも今はテストの点数は低いかもしれないけれど、数学センスがないというのとは違う。
これは、回復可能なのだろうか?
もう何年も計算手順を間違えて、それが癖になっている。
それを治すことは可能だろうか。

このところ、そんなことを考えていることが多いです。



  • 同じカテゴリー(算数・数学)の記事画像
    1次不等式の文章題。
    対称式の計算と、数学の成績がなかなか上がらない理由。
    絶対値の難しさ
    数学と男女差。
    関数が苦手な子。
    数学が苦手になる分岐点。
    同じカテゴリー(算数・数学)の記事
     1次不等式の文章題。 (2017-04-20 14:18)
     対称式の計算と、数学の成績がなかなか上がらない理由。 (2017-04-13 14:54)
     絶対値の難しさ (2017-04-07 14:39)
     数学と男女差。 (2017-02-16 14:25)
     関数が苦手な子。 (2017-02-08 13:47)
     数学が苦手になる分岐点。 (2017-02-05 13:26)

    ※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
    上の画像に書かれている文字を入力して下さい
     
    <ご注意>
    書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

    <?=$this->translate->_('削除')?>
    計算の工夫。
      コメント(0)