たまりば

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2015年10月24日

会話のズレ。



もう昔の話になりますが、中学受験生の作文指導をしていたことがあります。

その子の作文は、ときどき頭を抱えてしまう内容のことがありました。
文章は、言いたいことがよく伝わる、わかりやすいものでした。
具体的で、きちんと段落分けもされ、語彙も豊富です。
しかし、あまり他で見かけない内容なのでした。

例えば、運動会の組体操を題材にした作文。
近年、危険度の高い組体操が話題になっていますが、その当時も、6年生の組体操は小学校の運動会の花形種目でした。
どこの学校も、かなり気合を入れて毎日練習していたようです。
その子の小学校もそうだったのでしょう。
しかし、本番、その子の失敗がもとでピラミッドは崩れてしまったのだそうです。
自分たちの席に戻ってきて悔し泣きしている子もいたと、その作文には書かれてありました。
それほどに、皆、毎日一所懸命練習したのでしょう。

しかし、泣いているクラスメイトたちに、その子は言ったのだそうです。
「仕方ないよ。失敗は、誰にでもあるんだから」

・・・・・・・え?

そこまで読んで、私はもう声を上げてしまったのですが、まだ続きはありました。
それを聞いて怒った子が、彼につかみかかり、晴れの運動会にトラブル発生。
しかし、失敗は誰にでもあることなのに暴力なんておかしいというのが、その作文の結論なのでした。

・・・・・・・この作文を、本当に入試当日も書くの?
自分がトラブルメーカーであると、中学の先生に宣伝するようなものですよ?
( ;∀;)

その子は、もちろん真面目な子で、作文も一所懸命書いていたのです。
友達の少ない子に多いの
ですが、人間関係の経験値が少し足りないのかもしれません。
人の気持ちがどのように動くものか、少しだけわかっていない。
そのために、ときに外界との摩擦が生じる。

入試の作文対策としては、
「初対面の人には話さないようなことは、入試の作文にも書いてはいけない」
と説明すると、むしろこちらが逆にびっくりするほどすんなり理解してくれました。

しかし、その子が抱え込んでいる人間関係については、・・・・。
ある程度の助言はできましたが、そういう子の苦しさを根本的には解決してあげられませんでした。
近年、学力の高い子の中に、こういう子がさらに増えている気がします。
現代の特徴かもしれません。


人の気持ちを想像しなさいなんて定型の説教をするのは簡単ですが、上手く想像できるとは限りません。
人の気持ちの動きがあまりよくわからない子が、無理に想像すると、それはそれで厄介なことが起こります。

これはまた別の生徒の話ですが、あるとき、2枚つづりの確認テストを渡したときのこと。
1枚だけやって差し出すので、
「うん、2枚まとめてね」
と私が言うと、
「採点したくないの?」
「・・・・・え?」

こうして文字に起こしてみると、まるで喧嘩越しのような会話ですが、そういう雰囲気ではなかったのです。
本当に、1枚差し出して断られると、「採点したくないのかな」と思ってしまったようなのです。
他人の気持ちの想像の仕方が、トンチンカンなんです。

また別の生徒の話。
教室の後ろの机に置いてあった計算用紙に使う裏紙の表面が透けてみえ、それが気になった子が、
「この紙、何ですか?」
と質問したようだったのですが、最初のほうを聞き逃した私は、
「え?何?」
と訊き返すと、
「答えたくないなら、いいです」
「・・・・はあ?何の話?」
「いえ、いいです」
「・・・・おいおい。何の話?」
「・・・・何か訊いたらいけないことなのかと思って」

他人の言葉におかしな行間を読んでしまう。
そう思わせる空気を私が出していたのかと反省してみるのですが、でも、そういう反応をする子はタイプが限定されています。
国語の成績が安定しない。
国語のテストの点数が良いときと悪いときの差が激しい。
高校生になると、英語の長文問題でも同じことが起こります。
書いていないことを文章の行間に読んでしまう様子です。

困ったことに、このタイプは、本を読まないから国語が苦手というのではありません。
むしろ、同年代の平均よりも本を読んでいる子が多いように感じます。
本人も、読書好きを自認しています。

読書経験が肥大する一方、生活体験や友達と遊んだ経験が不足しているのかもしれません。
これから、10年、20年。
いずれ経験は蓄積され、他人とコミュニケーションをとりやすくなるはず。
でも、できれば就職までに間に合うと、本人が生きやすいだろうなあ。

最近も、中学生に関数を教えていて、
「この『変化の割合』という言葉は、テストに出るから、覚えて。ほら大問1の知識・理解のところで、そういう用語の穴埋め問題があるでしょう?あそこで出るから」
「テストに出るって何でわかるんですか?」
「・・・・・・・えっ?」

実は、私は君の学校の数学の先生と友達で、次のテスト問題を見せてもらっているんだよと、嘘をついてやろうかしら。
(^-^;

こういうズレた会話も作文も、私にとっては面白い。
なかでも上の作文はその具体性と描写力に感服しました。
だから、何年経っても覚えています。
幾多の凡庸な合格作文にはない個性がありました。
ただ、私は面白がれば済むけれど、本人は、おそらく困難な人間関係に苦しむこともあったのではないか。

今は、私なんかよりもずっと他人の気持ちがわかる素敵な大人になっていますように。




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