たまりば

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2014年02月13日

子どもの遠慮

子どもの遠慮


少し前のことになりますが、高校生の1人が仏頂面で塾に来て、いきなり、
「今日で辞める」
と言い出したことがありました。
話を聞くと、出がけにお母様に、
「塾だって、ただじゃないんだから」
と言われたらしいのです。
「金のことを言われるなら、辞める」
と頑なに言い張り、話を聞くにも時間がかかりました。

辞めると言い出した理由はそれだけではなく、学校で嫌なことがあり、それに加えてそんなことを言われたので、一気に感情的になってしまったようでした。

お母様は、もちろん、塾費用が高いからもう辞めてほしくてそんなことを言ったわけではありません。
「費用がかかるのはいいから、その分、しっかり勉強してほしい」
そういうことのはずです。
その高校生にそれがわからないわけでもないのです。
でも、「じゃあ辞める」という反応になる。
そういうことは、その子に限らず、あると思います。

子どもは、自分でお金を稼げません。
だから、親にお金のことを言われると、つらい。
「お金がかかっている分だけ、しっかり頑張ろう」
という気持ちになることは、ほとんどありません。
それを期待してそんなことを口にするのなら、やめたほうがいいです。

親にお金のことを言われると、子どもは、気持ちが暗くなるだけです。
やる気がなくなっていくことのほうがむしろ多いと思います。
親としては、せっかく塾に通わせているのに、意欲がないようだから、ついお金のことを言いたくなるのかもしれません。
お金のことなら子どもにもわかるだろうと、思ってしまうのかもしれません。
けれど、子どもは、お金のことを言われた、としか感じません。
この行き違いこそが、不毛です。

以前勤めていた個別指導塾は、かなり費用の高いところでした。
金銭感覚が一桁違う家庭の子どもが多かったですが、やはり費用が高いことを子どもに言う家庭もあったようです。
「1分100円だって言われた」
「はあ」
「だから、センセイ、ちゃんと授業やってよね」
「・・・・・・・はあ。ところで、今日も宿題を解いてきていませんね」
「私が宿題をやっている時間は、お金かかってないんだから、いいでしょう!」
「・・・・・・・へえ」

親にお金のことでプレッシャーをかけられて、素直に反省し、頑張ろうと思う子どもは、ほとんどいません。
やる気をなくすか、講師に矛先を向けるかです。


うちは、子どもに、お金のことを言ったことはない。
そう思う保護者の方も多いと思います。
しかし、親が忘れている何気ない一言を、子どもは、ずっと覚えています。
何も言っていないはずなのに、子どもは、塾費用のことを気にしていることがあります。
親が何気なく言った、「あら高いわね」程度のことを、子どもは重大事としていつまでもいつまでも気にしているのかもしれません。

1つには、子どもは、お金のことを実はあまりわかっていないからでしょう。
普通、親の年収なんて知りません。
年収を知ったところで、いくらあれば家族が暮らせるのか、そうした金銭感覚もありません。
塾費用が家計に与える負担がどの程度か、本当のところは、子どもにはわからないのです。
わからないから、余計にびくびくしてしまいます。

子どものことですから、楽しく過ごすために使われるお金のことは気にしていません。
家族での外食。
家族旅行。
そうしたものに使われているお金は、気にならないようです。
親も、そうしたことに使うお金のことで、子どもの前で暗い顔をしたことはないからでしょう。
また、新しいゲーム機が欲しい、パソコンが欲しい、携帯が欲しい、なんてことは、親に平気でねだります。
(^_^;)

でも、塾の費用は節約したほうが親が喜ぶんじゃないかと漠然と考えている子どもがときどきいるようなんです。
塾費用を節約すれば、パソコンを買ってもらえるんじゃないかという計算をしている可能性すらあります。
そして、個別指導の場合、子どもさえその気になれば、節約は可能です。

どうやって塾費用を節約するのかというと。
学校の定期テストが終わると、休むんです。
祝日も、休みます。
他にも何か理由をつけては、月に1回くらいは休みます。
事前連絡欠席は、振替可能です。
そうしてたまった未消化の授業を夏期講習や冬期講習に充当する。

一見合理的で賢い個別指導の使い方のようでいて、こういう授業の取り方をして成績の上がった子を、私は見たことがありません。
学年が上がるにつれ、確実に成績は停滞し、下降していきます。
理由は明白です。
端的に授業数を確保できていません。
まとまった復習をする時間がありません。
応用力をつける演習をする時間もありません。
他の子と比べ、地力がだんだん落ちてしまいます。
本人だけが、それに気づきません。

月に1回は欠席があるようですと、普段の授業は、学校の進度に合わせた予習復習で精一杯です。
つまりは学校の補習をしているだけです。
夏期講習・冬期講習の2~3回の授業は、次の学期の予習で精一杯。
そうして少しためた予習も、新学期が始まれば、たちまち休まれてしまい、消化されてしまいます。

中学1年、2年の間は、一見、それで上手くいくこともあります。
学校の授業が先に進んでしまった場合、こちらも少し無理をして復習を速め、予習を速めます。
何とか辻褄をあわせます。
そうすると、「なんだ、大丈夫じゃん」ということになる。
生徒、また休む。
この繰り返しです。

勉強に関して、それなりに自覚があるように見える子に、案外この傾向があります。
お母様は、一応、子どもに訊きます。
「大丈夫なの?」
「大丈夫」
それで、任せてしまいます。

勉強がそれで大丈夫かどうかなんて、中学生に判断させたらダメです。
15年も生きていない子どもに、何でそんな大切なことを判断させるんでしょう。
大丈夫なわけがありせん。

塾費用の節約は、しかし、親の希望でもあるのだろうかと、私は少し前まで思っていました。
でも、最近、保護者の方と面談して、どうもそうではないようだ、と気づきました。
保護者は、塾費用を節約しろなんて、子どもには一言も言っていないのです。
子どもが、勝手に判断して、節約していたのでした。

なんのために?

親が遠い昔、「塾の費用、高いわね」とつぶやいた、その一言のために、なのではないでしょうか?

子どもにお金のことを言うのは、かなり危険です。
言うときは、本気で。
子どもに塾をやめさせたいときに、言ってください。

間違った刷り込みが子どもにされている場合、親が繰り返し訂正しない限り、塾がいくら勧めても、もう必要な授業を取ってくれません。
どうか、繰り返し繰り返し、必要な授業はとるように子どもを説得してください。



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    Posted by セギ at 14:53│Comments(0)講師日記
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