たまりば

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2012年07月26日

国語教科書の小説


中学の国語の教科書は、随筆や説明文は、時代ごとにどんどん変わっていくのですが、柱となる小説教材の中には、何十年も掲載され続けているものがあります。
今でも中1の教科書に載っている『少年の日の思い出』なんて、私自身が中1のときにも学習しました。

友達のチョウを盗んでしまいました。
それを告白しました。
でも、許してもらえませんでした。

そりゃ、そうだろう。

正直に言えば、あの小説には、そんな感想しかないのですが、私が中2のときに教科書に載っていた小説『サーカスの馬』は、今も記憶に鮮明です。
あの小説は、登場する馬の背骨が曲がっている描写に差し障りがあり、教科書に載ることがなくなったと聞いています。
惜しいことです。

勉強もできず、運動もできず、友達もいない、まるで良いところのない、無気力で孤独な少年。
その少年が、いつも眺めていた、裏庭につながれているサーカスの馬。
この馬も、自分と同じでダメな奴だから、こんなふうにつながれているのだと、唯一共感できた存在。
そして、ラスト、一気に視点が逆転する、その爽快感。

でも、それに図式的に感動するのは、少なくとも勉強はできる子であり、本当に勉強ができず、運動もできず、友達もいない子ではないのかもしれません。
今の時代、小説を読むことは、勉強のできない子には難しい作業になりつつあります。
心から共感できる小説が存在しても、それを読む力がない。


もう何年も前になりますが、テレビのバラエティ番組で、タレントに中学レベルの5教科のペーパーテストを解かせて、その誤答を楽しむというものがあり、私もときどき見ていました。
その中でも突出して勉強のできない芸人さんが1人いて、驚愕するような誤答を連発していました。
芸人としても、大人から一目おかれるエッジの効いた笑いを提供するようなタイプではなく、失礼ですが、ぱっとしない芸人さんに見えました。

おそらく、そんな感じのまま、半年、1年、経っていたと思います。
その芸人さんが、別のテレビ局の「1か月1万円生活」という企画に参加したのを、これもまた、私は、見ていました。
すいません。あの頃、私は、テレビばかり見ていました。
深夜疲れ果てて帰り、そのままでは眠れないので、録画しておいた笑える番組を少し見て、心を休め、どうにか眠りにつくような日々でした。


あの番組をオンタイムで見た人とは、あのときの爽快感を共有できると思います。
1か月を1万円で過ごす。
そのやりくりさえ、やっぱりできない。
先を考えて行動しない。
あー、やっぱりダメだよね。
そう思って見ていたら、その芸人さんが、突然、モリを手に海に飛び込み、素潜りで魚を獲り始めたんです。

その斬新さ。
圧倒されました。

最初からそういう展開の企画であるとか、海辺に育っていれば、あれくらいは出来る程度のものだとか、そういうのは、いいんです。
初めて見たとき、本当にワクワクしましたから。

ある視点から見たら、どうにもならないように見えた存在。
しかし、視点を変えた瞬間、ヒーローに変わる。

いや、本当は、最初から、その人はヒーローだったんです。
勉強ができない子に、勇気をくれる。
「勉強なんかできなくてもいい」というよりも、むしろ、「頑張れば、勉強もできるようになるかもしれない」と言えるくらいの勇気をくれる。
見ていると気持ちが明るくなる。
そんな存在。

これは、『サーカスの馬』だ。
テレビのバラエティなのに、ここにはブンガクがある。
私はそう感じ、私自身も励まされるように思いました。

しばらくして、その芸人さんが、子どもたちのカリスマであると知りました。
小学生向けの学年雑誌に連載を持っていて、圧倒的な人気がある。
特に、勉強があまりできない小学校高学年の男子にとって、とても大切な人だと言うのです。
親がうっかり「濱口」なんて呼び捨てにしたら、「濱口さん、と言え」と怒られるとか。
(*^_^*)


だから、思うんです。
君たちの感動を、でも、何十年も前に、小説に書いている人がいる。
文章の読み方を教科書で学んだら、その先に、すごく面白い文章が待っている。
国語の勉強は、国語の教科書を読むためにあるんじゃなくて、その先の、自分の読みたい文章を自由に読むためにある。
易しい言葉で書いてあるライトノベルだけじゃなくて、歯ごたえのある文章で書いてあるものの中に、とてつもなく面白いものがあるのだから。



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    この記事へのコメント
    私は「少年の日の思い出」も「サーカスの馬」も習っていない古い世代です。

    小学校の国語の教科書といえば吉野源三郎の「君たちはどう生きるか」とか河口慧海の死に物狂いのチベット辺境地での布教活動とか中島敦が書いた詩人になりたくてヒト食い虎になってしまった中国の話とかですね。

    勉強の出来ない、字なんて読めない?暴れん坊の男の子たちが手ぬぐいの端を加えて唸っていたのが思い出されます。

    野球とけんか、零点ばかりの真っ白な脳みそに何を染み込ませるか、人生の何がしかを思い馳させる、その時その時の学校教育が重要と思います。

    メデイアの芸人の生き様がそれに変わり得る、時代なのでしょうか・・・
    Posted by maruyama at 2012年07月27日 10:05
    maruyamaさま、コメントありがとうございます。
    (*⌒-⌒)
    「サーカスの馬」を読んでも、おそらく感動しない子どもたちが、深いところであの芸人さんを支持しているのはなぜなのか。
    いろいろと考えさせられます。
    「きみたちはどう生きるか」懐かしいですね。
    「山月記」は、今も高校教材にあるかもしれません。
    あれは、逆に、秀才が心を揺さぶられる小説ですね。
    Posted by セギ at 2012年07月27日 13:10
    なるほど、心を揺さぶるかどうかは読み手側の脳の問題なのですね。

    ヒト食い虎は秀才の脳をーーー私は臭才でしたがーーー

    何でもいいから小さい時から面白い!を感じて積み上げて欲しいですね。
    Posted by maruyama at 2012年07月27日 17:14
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