たまりば

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2012年01月10日

誰のための受験か



いよいよ入試が近づいてくると、思い出すのは、自分自身のことです。
私自身も、中学受験をしました。

なぜ、受験することになったのか、理由はよくわかりません。
私が受けたいと言ったからだ、と母は言うのですが、記憶がありません。
私が覚えていないだけで、実際にはそう言ったのだとしても、それが本当に私の意志だったとは思えないんです。
既に、小学5年の春にはそういう話になっていました。
ということは、それより以前の話でしょう。
おそらく、私は、母親の顔色を見て、そのようなことを言ったのだと思います。
母は、私にそう言ってほしがっている。
そのように察して、「中学を受験したい」と言ったのでしょう。

小学受験は完全に親の意志で、そのことに異を唱える人はいませんが、中学受験も、8割は親の意志だと思います。
本人が決めたような形になっていても、親が望まないことを、子どもは口にしませんから。
親の無意識のレベルのことさえ、子どもは察知します。
人生の全ての時間を親とともにいるのですから。
親の怒りのツボも、何をすれば親が喜ぶかも、子どもは知っています。

子どもを地元の公立に行かせたかったら、誘導することは、易しい。
そのようなことを、子どもの前で、1度か2度、口にするだけでいいのです。

中学を受験して、地元の公立ではなく、私立か国公立の中学に通うことが、自分の人生にどういう意味をもつのか、理解している小学生は、ほとんどいないと思います。
それは、志望校に合格して、実際に通い始めても、まだわからないことです。
地元の公立に通ったことがないのですから、差がわかりません。

むしろ、中学受験のメリットをとうとうと語る子どもがいたら、気持ち悪いです。
質の高い授業。
広がる進路の可能性。
優れた同級生たち。
将来に及ぶ人脈。
そんなことを口にする子ども、嫌ですよね。
こいつ、勉強はできるだろうけれど、人間として、何かどこか間違っていないか?
そんな心配をしてしまいます。

そんなこと、受験勉強をしている小学生には理解できることではありません。
合格した先に何があるのか、それは、わからない。
でも、何となく、親が自分の中学受験を望んでいるのを感じる。
受験をすると、お母さんが喜ぶ。
合格したら、お母さんが、もっと喜ぶから。
子どもの本心は、その程度のものではないでしょうか。

中学受験をして良かったと、本当に思うのは、大人になってからです。
それは、間違ってはいない選択。
でも、子ども自身が行う選択ではありえません。

それなのに、親は、自分の意志で子どもを受験させているという意識はないことが多いようです。
私の母も、そうでした。
私が受けたいと言うから、受けさせるのだ。
そのように思い込んでいました。
この意識のズレは、子どもには永遠の謎です。

入試が近づいて。
1月になると、親の気持ちも子どもの気持ちも張りつめてくるので、親子喧嘩が起こることは、そう珍しいことではありません。
それまでの1年間、あるいは2年間。
人によっては、3年、4年、遊びたいのを我慢して勉強してきた結果が出る。
その緊張とストレスは、並みのものではありません。
毎年、1月になると、
「言い合いになってしまって、娘が興奮して大泣きして、ちょっと塾に行ける状態ではないので、今日は休ませていただきます」
という電話をお母様からいただきます。

私もやりました。
私が勉強を始めず、ちょっとグズグズしていたというレベルのことから、あっという間に、もう受験をやめるのやめないのという大喧嘩。
「あんたが受けたいって言ったんでしょう」
という母の言葉。
一番ショックを受けたのは、その言葉でした。
今、それを言うのか。
私だけに、責任を押しつけるのか。
言質をとった気で、自分の責任は回避するのか。
まあ、子どもは、そのような言葉づかいはしませんが、ギリギリで母親に突き放されたような気持ちでした。

もっとも、そういう喧嘩は、親子喧嘩の常として、翌日には何もなかったこととして、受験手続は着々と進められました。
そして合格発表の日。
苔むした古い石段を上がったところにある中学に、母と合格発表を見に行きました。
ワルツのリズムでないと上がれない、幅の広い歩きにくい石段でしたが、それにしてもというほどに、母の歩みは止まりがちでした。
駆け上がって発表を身に行きたかった私は、お母さん、何をやっているんだろう、とイライラしました。

そして、発表を見て。

母は、帰り道に、私を連れて、いきなりカバン屋により、やけに高級な学生カバンを買い、その荷物を持って、実家に寄り、祖父母を相手に、一人でベラベラしゃべっていました。
あんなに浮かれていた母を、私は、その後も、見たことがありません。

だから、私は、「あなたが受験したいと言ったんでしょう」という母の言葉を許しました。
やっぱり、母が、一番喜んでいたから。


写真は、日曜日の蓼科山。
山頂からの眺望。





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