たまりば

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2018年06月06日

be動詞がわからない子は、案外多いのです。


さて、今回も中学英語の話から。
英語の学習の順番は、私自身が中学生だった頃と今とあまり変わっていません。
まずはbe動詞の学習から始まります。
教科書によって、This is ~. の文から始まるか、I am~.から始まるかは違いますが、正直大差ない。
要するに、まずはbe動詞を学びます。
たまに一般動詞から学習する教科書がありますが、やはり教えにくいと感じるのか、採択されないことが多いです。

中1にいきなり「be動詞」という文法用語を使って教えることはほとんどありません。
まずは、こういう形の文を覚えなさいという授業になります。
「~」のところにいろいろな言葉を入れて、どんどん転換練習して、こういう形の文を使えるようにするのが初歩の学習となります。
ここで誤解する子どもが現れます。

am, is,areは、日本語の「は」の意味なんだなと思い込むのです。
それは間違っているとも言い切れないのが微妙なところです。
be動詞にはイコールの意味は確かに存在します。
日本語にしたら助詞「は」に相当することにはなるでしょう。

I  am a girl.
私 は 女の子。

This is  a book.
これ は 本。

そういう解釈です。
そう解釈した子が、次に一般動詞を学習する際に何をやってしまうかというと。
「私は、野球をする」を英語にすると、
I am play baseball.
私 は する 野球。
という英文を作ってしまうんです。

いやいや、違うよ、amは要らないよと説明しても、そういう子は首をひねっています。
play baseball のように、語順が日本語と異なることは百歩譲って理解しても、「は」にあたる言葉がないなんてことは、理解を越えたことなのかもしれません。
be動詞=日本語の「は」、ととらえたことの弊害の1つでしょう。

英語と日本語は1対1の対応ではありません。
文法が全く異なる言語ですから。
でも、そのことを理解できない子どももいます。

千年以上も日本と全く交流のなかった外国の言語は、日本語と少しも似ていなくて当然。
全く異なる文法の言語であるのが当然です。
しかし、そう説明しても理解しない子もいます。
世界の全ての言語が日本語と同じ構造だと思いこんでいるようです。
いや、日本語に構造すなわち文法があることすら意識できていないかもしれません。
そうした子にとって、日本語は自明の理。
それだけが正しく、それ以外の構造の言語があるということは想像しにくのでしょう。

幼い子どもは、世界の中心に自分が存在すると思っています。
世界の中心は自分ではないと理解し、相対化するには、精神的な成長が必要です。
中学生になると、そろそろそういう成長は期待できるのですが、言語においてもそうなのだと発想できない子はいて、それが英語と日本語を1対1の対応で覚えようとすることにつながっているのかもしれません。
言語は全て日本語と同じで、ただ使う単語が違うだけだと思ってしまう様子です。

文法も異なりますが、1つの語句がカバーする意味合いも、言語によって異なり、日本語と1対1の対応にはなりません。
例えば、playという動詞は、最初に勉強するときがplay baseball の形だったりしますと、play=「する」と覚えてしまう子がいます。
だから、「あなたは何をしていますか」といった疑問文でもplayを使ってしまい、
「playは『する』じゃないの?」
と訊いてきます。
「日本語の『する』に一番近いのはdoだね。でも、それも完全に一致するわけじゃないよ」
と説明しても、首をひねっています。
「『する』がdoなら、何でdo baseballじゃないの?」
「日本語と英語の単語は1対1で対応しているわけじゃないから、そういうこともあるでしょう。1つの単語にいくつも意味があって、一部分はかぶるけれど、他はかぶらないということはよくあることだよ」
「何でそうなるの?」
「・・・そういうことを本当に心から疑問に思って勉強したいなら、大学の言語学科か英語学科に進みなさい。好きなだけそうした勉強ができるよ」
「いや、別にいい。そんなに興味ない」
「・・・・」
純粋に英語への興味からそうして色々質問してくるのなら良いのですが、言外に、英語への非難がにじんでいることが多く、気になります。
英語の勉強が嫌で、英語を否定したい、「英語は日本語と違ってこういうところがダメだ」と主張したいという気持ちの表れがそうした疑問となって口をついて出ているようなのです。
英語を否定したいと思っている時点で、英語と敵対関係にあるのですから、勉強が進まないですね。
(-_-)

それはともかく。
I am play baseball.ではなく、I play baseball.
それが正しい英語だといったんは理解して、その後、三単現や人称代名詞などを学んだ後、現在進行形の学習に進みます。

I am playing baseball now.
私は今野球をしているところです。

現在進行形のとき、動詞の形は、「be動詞+~ing」。
am, is, areをまとめてbe動詞と呼ぶことはそろそろ教えても大丈夫な段階ですが、~ingは「現在分詞」と呼ぶということは、中1ではまだ早いので教えません。
文法の専門用語ばかり出てきて、それを覚えられずにギブアップしてはいけませんから、~ingという形が動詞にはあるんだねとぼやかした形で説明します。
しかし、なぜこのときbe動詞を使うのかは、初めて現在進行形を学ぶ子どもにとっては理解不能であり、相当な違和感があるのは事実です。
とはいえ、ここで理屈をこねてもさらに理解不能でしょうから、その違和感を逆手にとり、ここでbe動詞を使うんだね、be動詞って不思議な働きがあるねと説明します。
「be動詞を忘れると困るから、覚えるときは必ず『be動詞+~ing』とセットで覚えようね」
と説明し、be動詞のところは節をつけて大声で強調したりもするのですが、そうした授業の工夫も徒労に終わり、be動詞を書き忘れる子は一定数存在します。

I playing baseball.
( ;∀;)

be動詞を必ず使えと言ったのになあ。
be動詞+~ing の形で覚えなさいと強調したのになあ。
何度も復唱したのになあ。
何で間違えるかなあ・・・。( 一一)

そういう子がよくする質問があります。
「be動詞って何?」
「be動詞とは、am,is,areのことです。色々な働きがありますが、難しいので、それは今は聞かないほうがいいと思う。後になったら嫌でもやるからね。それとも今、聞きたいですか?」
「別にいい」
「では、とにかくbe動詞とはam,is,areのことで、かなり特別な働きをする動詞なのだということだけ覚えましょう」

とにかく、現在進行形は、be動詞+~ing。
そうして現在進行形の学習がひと通り終わり、それまでの復習問題を解くと、またこんな英文を書く子が現れます。

I am play baseball.
( ;∀;)

「・・・be動詞と一般動詞原形は一緒には使わないんだよー」
「be動詞を必ず書けって言った・・・」
「それは現在進行形のとき。『今~している』の意味のとき。これは現在形」
「何が違うの?」
「一般動詞の現在形は、今、行っている動作じゃないんですよ。そういう習慣があると言っているだけで、今野球をしているわけじゃないのです」
「ちょっと何言ってるかわからない」

I play baseball every Sunday morning.
この例文だとわかりやすいと思うのですが、現在形というのは、現在その動作を行っているときに使うものではありません。
例えば毎週日曜日の朝に野球をする習慣がある、そういうことになっているということを伝えたいときに使うものです。

現在形は、
①現在の習慣
②現在の状態
③不変の真理
④確定的未来
⑤時・条件を表す副詞節は未来のことを現在形で表す
といった主な用法があるのですが、こういうことを体系的にまとめて学習するのは高校生になってからです。
中1にこんなことをいきなり教えても半分も理解できないでしょう。

しかし、中1の今はまだそんなことはわからなくてもいいから、というところで逐一壁に突き当たり、英語がわからなくなる子がいます。
be動詞がわからない、現在形がわからない、と繰り返し言います。
もやもやしていることがあると、そこから先に勉強が進まないようなのです。
多くの子は、そんなことはあまり深く考えず、nowが文末についているときは「今~している」なんだからbe動詞+~ingの形にすればいいんでしょうと把握し、それで正解するのですが。

be動詞が上手く呑み込めないまま、一般動詞の疑問文を作る問題では、
Do you play baseball ?
という英文を自力で作れず、
Are you play baseball ?
というミスを中2になっても繰り返しては注意されているうちに、be動詞の別の用法を学ぶことになります。
存在を表す用法です。

There is a book on the desk.
机の上に一冊の本があります。

be動詞には、存在を表す用法があります。
「ある」「いる」の意味です。
この文の主語はbookです。
もともとの形は、
A book is there.
だったのが、強調のための倒置が起こり、それが固定化され、構文となったものです。

be動詞の主な働きは2つ。
①A=B の意味を表す。
 すなわち、主語=補語の文を作る。
 補語は、名詞または形容詞。
②存在を表す。
 「ある」「いる」の意味。
 There is a book.という構文は、不特定のものが存在するときに用いる。
 特定のもの・人が存在するときは Mary is in the library. のように表す。

中2になると、このようにbe動詞の2つの用法は整理され、かなりわかりやすくなってきます。
そこで開眼してくれると良いのですが、be動詞がわからないという子が、こういうところはスルーすることがあります。
長年の疑問がようやく整理されたというのに、なぜ、スルー?
もう英語はわからないものと諦めているからなのでしょうか。
('_')

そうこうするうちに、中2の終わりに「受け身の文」が登場します。
今度は、be動詞+過去分詞 です。

Baseball is played by nine people.

「be動詞+過去分詞」とセットで覚えるんだよー。
be動詞を絶対に忘れないでねー。
そう強調するのですが、例によって必ず忘れる子がいます。

Baseball played by nine people.

「be動詞を入れようよ。これだと、ただの過去形の文ですよ」
目立つ単語を拾う形でしか文意を取ることができない子も一定数いて、能動態と受動態の文の識別が難しい場合もありますが、そこにbe動詞の有無という例のミスが登場しますから、グチャグチャになってしまう子も多いのです。

とにかくbe動詞。
受け身の文はbe動詞。
be動詞+過去分詞。
そう強調して定期テストを乗り切った後、それまでの復習をすると、能動態の過去形の文も、

I was played baseball yesterday.

と、また不要なbe動詞を書いてしまうミスが復活する子がいます。
( ;∀;)

全ては裏目裏目に出てしまい、be動詞を入れるべきときに入れず、入れてはいけないときに必ず入れる。
英語が苦手な子のbe動詞の扱いは、完全に裏・裏・裏となっていて、壮絶です。


なぜそこまでbe動詞がわからないのか?
1つには最初に書いた通り、be動詞=「は」 という最初の誤解から解放されていないのではないかと想像されます。
それは、英語の構造は日本語と同じであるはず、という誤解です。
be動詞が日本語の何にあたるのか、結局、わからない。
だから、使い方がわからない。
そういうことなのでしょうか?
「be動詞が日本語の何にあたるか」という見方がそもそもおかしいので、be動詞はbe動詞という英語固有のものととらえようよと話すのですが、そうしたことは生徒にとって抽象的で、頭に心になかなか届かないもどかしさがあります。

もっと単純に、be動詞を使うか使わないかといった二択の知識を必ず間違えて覚えてしまうだけという場合も考えられます。
こういうときは使う、こういうときは使わない。
この形の知識を覚えることが苦手で、なぜか逆に逆に覚えてしまう子がいます。
自分で誤用したことは記憶に残りやすく、それが「聞き覚え・見覚えのある英語」として本人の頭の中に蓄積されますから、誤用は強固になるばかりです。
誤用を上回るインパクトのある覚え方が本人の頭の中に入らない限り、誤用は続くのかもしれません。


中1・中2レベルの英語でこんなにもつまずくというのは悲観的な要素ですが、しかし、脳の発達時期には個人差があります。
中1の頃には理解できなかったことも、その後、理解できるようになることがあります。
数学と英語と両方教えていますと、数学を教えていて、
「この子は、小学校の算数の解き方をしてしまうなあ」
「数学の論理体系、数理の根本が形成されていないのかなあ」
という感想を内心抱いていた子が、中3あたりから急成長することがあります。
理屈で説明すればスルッと理解してくれるようになるのです。
英語の場合、文法用語を駆使すればするほど、ダイレクトに理解してくれるようになります。
文法用語は、抵抗感が強い硬質のものですが、その仕組みを一言で伝えることができるので便利なのです。
ものごとには全て名前があります。
名称を把握することで、世界は混沌を脱し、秩序立てられます。
英語の場合、S・V・O・C・Mと、各品詞の名称と働きを理解すれば、大抵のことはどうにでもなります。
知識の伝達がスムーズになるのです。


中1の初めの頃はどうなることかというほどbe動詞の扱いに戸惑っていた子もやがて精神的に成長していきます。
ある子が高1になったとき、以下のことを説明したことがあります。
分詞の限定用法・叙述用法の解説をしたときです。
分詞の限定用法は、名詞を修飾する用法。
それは形容詞と同じ働きをするということ。
分詞の叙述用法は、SVCやSVOCのCの用法。
それは、形容詞と同じ働きをするということ。
つまり、分詞は動詞が形容詞化したもの。
分詞は、形容詞なんだね。
形容詞の前にはbe動詞を置くよね。
進行形の~ingの前にも、be動詞を置くね。
受動態の過去分詞の前にも、be動詞を置くね。
全部、同じだね。
普通のSVCの分析とはまた違うことだけど、なぜbe動詞を置くのかだけは、納得がいく気がしない?
「・・・・ああっ」
悲鳴にも似た声が、その子から上がりました。
進行形の文、受動態の文で、be動詞を使うこと。
その構造に別の方向から光が当たって理解できたのでしょう。

こういう感動を共有できることが英文法を教え学ぶ喜びだと感じます。
勿論、be動詞の誤用など、その子の場合は2度と起こらなくなりました。
覚醒したのです。

  


  • Posted by セギ at 13:04Comments(2)英語