たまりば

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2013年05月20日

ミスが減らない理由



昨日の日曜日は、大学受験模試の会場責任者の仕事をしてまいりました。

まだ、今年は1回しかやっていないので、たまたまなのかもしれませんが、何だか、今年は、監督員のミスが少なく、受験生もしっかりした子が増えたなあと感じました。
「ゆとり教育」のダメダメ感が、高校生・大学生にも浸透してきて、それでは社会で通用しないと理解した子が増えてきたのかなあ。
たった1回のことなので、まだまだわかりませんが。

その一方で、生徒でも監督員でも、ミスする子は、ダブル、トリプルでミスを重ねる印象がありました。
ミスする子のダメっぷりが際立つ印象があり、可哀そうでした。
(-_-;)


一面的な見方かもしれませんが、社会でどう評価されるかという場合、
「ミスは多いけれど、面白い発想をする人」よりも、
「とにかくミスがなく、きちっと正確に仕事をこなせる人」
のほうが、高く評価されるように感じます。

いや、違うな。

現実問題として、自分が思っているほど「面白い発想」はできない人が大半なので、本人は、「ミスは多いけれど、面白い発想をする人」を目指していても、他人から見たら、「ただ単にミスの多い人」で終わってしまう。
仕事にミスがないことを前提に、その上で面白い発想をするから、「あ、この人、面白い発想をする」と評価されるのでしょう。

もし本当に「ミスは多いけれど、面白い発想をする人」なのだとしても、そういう人は、周囲にその良さを理解され、フォローされないことには、どうにもなりません。
しかし、そのような周囲に恵まれる可能性は低いでしょう。
仕事のミスは、周囲に迷惑をかけます。
結局、周囲に余計な負担ばかりかけるので、ミスの多い人は、周囲から評価されなくなります。
もういい加減にしてくれよ、と周囲が思っても、それは、仕方ないですよね。

ミスが多いということは、だから、将来を考えると重大なことなのですが、子どもには、その重大さが、なかなか伝わらないです。
(-_-;)

問題が解けないこと、理解できないことは、重大なことだと感じるのに、ケアレスミスは、どうでもいいと思ってしまう子が多いです。
ケアレスミスをしても、そんなミスはなかったことにしようとします。
実際、自分がミスしたことを本当にすぐ忘れてしまい、なかったことにしてしまいます。


以前も書きましたが、テレビで、こんな実験をやっているのを見ました。
60代と20代の2つのグループに、それぞれドミノ倒しを一面作る作業をしてもらう実験です。
上手く倒れたら、色違いのドミノによって文字が表れる仕組みです。
その作業の様子を観察する実験でした。
2つのグループの作業の仕方には、驚くほどの違いが表れました。

20代グループは、作業自体は、速い速い。
でも、やみくもに作っていき、誰かの手元が狂って、ドミノが途中で倒れ、全滅してしまうこと2回。
最初から、やり直し。

一方、60代グループは、話しあい、まず、ドミノを所定の位置に横に倒したまま置いていくことから始めました。
置き終わると、休憩。
そして、いよいよ、ドミノを立てていきます。
慎重に、慎重に。
30分くらい作業すると、誰が言い出すともなく、休憩。
あともう少し、というところで、互いに頷きあい、また休憩。

結局、2つのグループは、ほぼ同時に作業終了しました。
そして、出来上がったドミノを倒してみると。
20代の作ったドミノは、雑で、表れた文字はガタガタ。
一方、途中で1度も倒さなかった60代のドミノは、見事に文字が表れました。
慎重で緻密な作業。
集中力が持続しないのを見越して、途中に入れる休憩。
60代の経験値の高さを感じました。

こんなにもはっきりと実験結果が表れるものなのか。
というより、20代の中で、もう少し、リーダーシップをとれる奴はいないのか。
人間のやることだから、どうせミスすると、気づかないのか。
そのミスをなくすためにどうすればいいかと考えないのか。

こういう結果を出すためのやらせじゃないの、と感じたほどの実験結果でした。
でも、おそらく、やらせではないのでしょう。

というのも、私も、大人のための数学教室と、中学生対象の授業と、同じテキストで両方やっていると、こんなに違うものなのかと感じるんです。

たとえば、こんな問題。
(2x+3y)(2x+5y)-(3x+2y)(3x-4y)
乗法公式を使って展開していく問題です。
この問題、後半の( )の前にマイナスの符号があります。
このマイナスは、後半の( )の各項にかかっていきますから、後半の符号は全部正負が逆転します。
慣れてくれば、それを意識しながら、いきなり( )を開いていくことはできます。
なので、大人の人には、
「慣れれば、それは可能です。でも、やっぱりミスしやすいところですので、慎重に、-( )と、後半は( )を外さないで書いて、次の行で、符号を変えていくほうが安全ですよね」
と説明します。
強制するようなことではありませんから。
でも、皆さん、やっぱり、慎重に、-( )と、いったんは( )を外さないやり方のほうを選びます。
つまらない省略をしたせいで、結局、そこでミスし、正答できないなんて、バカらしい。
そう判断するのが、大人の知恵です。

一方中学生は、ここを省略します。
上の問題の次には、もう同類項の計算もした答えだけ書いてしまう子もいます。
それで正答できるのなら、別に止めませんが、ほとんどの場合、ミスします。
たて続けにミスしたのを見て、
「それをするとミスするから、こうやって、慎重に解いていこうか」
と助言します。
しかし、多くは、聞き入れません。
ミスするから、と言われれば言われるほど、今度こそ、ミスせずにやってやると思うようです。

あなたがミスしやすいと言っているのではない。
人間は、ミスをするものだよ。

それを言っても、ほとんどの場合、通じません。
その場では、しぶしぶ直しても、テストになると、やっぱり省略し、そして誤答します。

「テストは時間がないから、そんなにきちんと書いている暇はない」なんて言い訳したりします。
頭の中で暗算しているほうが、余計な時間がかかっているのを、私は見ていて知っているんですが。
書いて解いている私のほうが速く解き終えますから。
でも、本人は、暗算している時間の長さに、気がつかないんです。
手を使って何か書くのが、本当に面倒くさいので、書いていたら時間がかかる、と思いこんでいる様子です。
書いたほうが絶対に速いのになあ。


人間は、ミスをする。
それを理解するには、社会に出て、10年、20年。
人間は、こんなバカなミスをするのかと、自分の場合でも、他人の場合でも、ミスを体験し、そのミスをフォローするための善後策に駆け回り、ああもう嫌だ、と心の底から思うようになってからでないと、わからないことなんでしょうか。

人間は、ミスをする。

しかし、昨日の手応えでは、若い子の中でも、賢い子は、それに気がつき始めています。

だから、自分のミスを放置していると、ますます差をつけられますよー。
(*^_^*)
  


  • Posted by セギ at 11:46Comments(0)講師日記